
株式会社一福
ココがPOINT!
島根県を中心に直営7店舗、計10店舗を展開する出雲そば専門店「奥出雲そば処 一福(いっぷく)」。人手不足や属人化といった課題を抱えるなか、同社が目指したのは「社員不在でも回る店舗体制」の構築だった。
その鍵となったのが、業務の可視化・標準化を実現する『V-Manage』の導入。ただシステムを入れただけではなく、現場に根付かせる工夫を重ね、着実に使いこなす土壌を築いた。今回は、導入による現場の変化やシステムを店舗運営の要とするに至ったプロセスについて、総務部 次長の中川智憲氏と伊藤彩氏に伺った。
総務部 次長 中川 智憲 氏(以下、中川氏):創業は1922(大正11)年、今年で創業103年を迎えました。仕出し業から始まり、1958年に「奥出雲そば処 一福(以下、一福)」の1号店を出店。現在は直営7店舗、FC3店舗の計10店舗を展開しています。飲食店のほか、そばの製造・卸販売、ギフトやECなどの事業も行っています。
一福のそばは、そばの実を甘皮ごと挽いた「一本挽き」の黒いそばが特長です。出雲そばは丸く広げて延ばすという特徴があり、丸打ち、手打ちにてご提供しています。つゆは自社工場で仕込み、全店舗に提供しています。
中川氏:コロナ禍を経て、長年店舗を支えてきた店長や職人の退職が続き、運営が難しくなりました。責任感のある人材に任せきりだったため、業務が個人に依存し、引き継ぎがうまくいかないケースも多くありました。特に島根県のような地方では、そもそもマネジメント層となる人材が限られており、新たに育成するのも時間がかかります。店舗ごとにルールや運営方法が異なる状況では、本部との認識のズレも生まれやすく、全体の最適化が難しい状態でした。
そんな中、代表の伊藤から『V-Manage』の話を聞き、自身でも動画を見て、「仕組みで現場を支えることができるかもしれない」と思い、導入を決めました。もともと取引のあったインフォマートさんのサービスという信頼感もありました。
総務部 伊藤 彩 氏(以下、伊藤氏):マネジメント人材の不足は、以前から感じていた課題です。
『V-Manage』で本部から指示を出し、各店舗に浸透させることができれば、システムがマネジメントを補完してくれる。これが導入を進めたもう一つの理由です。
中川氏:紙や口頭での運用が中心だったため、デジタルへの抵抗感が強かったです。まずは若手の店長と相談し、簡単なタスクのテンプレート作成からスタートしましたが、同じ内容の業務でも店舗ごとに手順やルールが異なっていることが判明しました。導入初期の定着は、正直一番苦労しました。
伊藤氏:最初から一律のルールを押し付けるのではなく、「まずは触ってもらう」ことを大切にしました。店長へのヒアリングを通じて、自店舗に必要なタスクから少しずつ登録。その後。店舗間で共通化できる業務を見極め、段階的に全体へ広げていきました。
伊藤氏:店舗ごとに違っていた業務ルールややり方を見直し、本部メンバーと現場のマネージャーが合同で、まずは全店で共通化すべきタスクを特定し、それに基づいて業務を整理しました。
また、「臨時タスク機能」を活用して、経費や小口現金の精算、出納帳の提出確認、棚卸の報告など、従来バラバラだった業務を共通化し、期限管理も可能にしました。これにより「V-Manageを使う」こと自体が店舗業務の一部として習慣化されていきました。
さらに、『V-Manage』の「タスク実施率」などを店舗社員(責任者)の評価制度に組み込んでいます。店舗単位での利用状況が評価に直結することで、社員自身が活用を主体的に推進するようになり、結果的にアルバイトやパートを含む従業員全体にも活用が広がっていきました。
「やるべきこと」や「管理の基準」が明確になることで、スタッフにとっても困ったときに立ち戻れる『業務の軸』として機能しています。こうした平準化が進んだことで店長の負荷が減り、複数店舗を束ねるエリア統括店長制度も導入を開始しました。
中川氏:私たちが目指しているのは、社員が不在でも店舗が回る体制の実現です。今はその第一歩として、パートスタッフと「運営の感覚」を共有できるようになってきました。以前は店長だけが知っていたノウハウを、『V-Manage』で見える化することで、店舗全体のレベルアップが進んでいます。
また、職人の離職を補うために「ステップアップ制度」を設けました。これは、ホール業務から調理補助まで習得したパートスタッフが試験に合格すると、時給が上がる仕組みです。優秀なパートスタッフが活躍できる場を作ることで、現場の戦力強化にもつながっています。
さらに「グレードアップ制度」では、『V-Manage』を使ってマネジメントの質や店舗業務の水準を引き上げることを目指しています。日々の業務や管理基準が『V-Manage』に集約され、これを使いこなすことで、実践的にマネジメントスキルを身につける環境が整いつつあります。店長以外のスタッフも運営の視点が育ち、店舗の自立性が高まると感じています。
中川氏:多店舗展開という大きな目標があります。そのためには、『V-Manage』をどれだけ活用できるかが重要だと考えます。社員レスでの店舗運営が可能になれば、少ない社員でも展開ができると期待しています。まず、それが第一歩です。
また、新たな制度を取り入れたことで、今いる人材の新たな能力に気付ける機会が増えました。業務の幅を広げることで、スタッフ一人ひとりの仕事も豊かになります。現場と本部、本社の架け橋となり、社員だけでなくパートスタッフも含めて取り組んでいきたいと考えています。
伊藤氏:離職や退職の問題は今後も続きますが、『V-Manage』を活用することで、どの店舗でも業務の統一が図られ、効率的に店舗運営ができる体制が整います。急な欠員にも対応できる強い店舗を作っていくことが、今後の目標です。